第164号
《クリスマス礼拝》
天使ガブリエルはガリラヤのナザレに住む乙女マリアに現れ、「おめでとう、恵まれた方。主があなたと共におられる」と告げました。マリアはまだ一四、五歳の乙女でした。この時代、男の人が女性に挨拶することはありませんでした。ましてや天使が現れ、乙女にこのようなことを言うとは考えられないことでした。「マリアは戸惑い、いったいこの挨拶はなんのことかと考え込」みました。すると天使は「マリア、恐れることはない。あなたは神から恵みをいただいた。あなたは身ごもって男の子を産むが、その子をイエスと名付けなさい。その子は偉大な人となり、いと高い方の子と言われる。神である主は、彼に父ダビデの王座をくださる。彼は永遠にヤコブの家を治め、その支配は終わることはない」と言われました。マリアにはダビデ王の家系に連なるヨセフという、いいなずけがいました。婚約は結婚と同じで、解消するためには法的な手続きが必要でした。また、結婚は婚約の後、式をあげ、花嫁を夫の家に迎え入れることによって成立し、その後、妻に生まれた子は夫の子となったのです。この時代、乙女が夫以外の子を身ごもれば死罪となりました。しかし、マリアは身ごもり、しかも、その子はアブラハム、モーセ、ダビデといった預言者を通して神が民に約束された救い主、メシアだと言うのです。
祭司ザカリアと妻エリサベトの子である洗礼者ヨハネはアブラハム、モーセ、ダビデといった旧約の預言者の最後に来た人となり、マリアと夫ヨセフは預言者たちの口を通して神がイスラエルの民に約束しておられたメシアの到来を最初に知らされた人でした。彼らは旧約と新約の接点に立ち、救いの到来を神から告げられたが故に特別な人となったのです。それは主イエスの証人となるということでした。
マリアは天使ガブリエルの声を、質素な生家で聞いたのではないでしょうか。その声によって彼女の生涯は、この世から神に属する者に変えられたのです。それは天使ガブリエルとの出会いによって立派な人になったというのではなく、今までと変わらないマリアに神が生涯、共にいてくださるということでした。
マリアは聖霊によって主イエスを宿しましたが、同じことがわたしたちにも起こるのです。主イエスの言葉を聞いて、聖霊を受けるならそれはわたしたちにとってのクリスマスの出来事となるからです。わたしたちの心の中に「生まれる子」は主イエスであって、そのお方が王となってこの世だけでなく永遠にわたしたちを支配するのです。わたしたちはこの世の知識、価値観に従って歩んで来ました。主イエスの言葉を聞いた後はマリアと同じように「わたしは主のはしため(しもべ)です。お言葉どおり、この身に成りますように」と言えるように変えられるのです。