2004年7月18日日曜日

コリント一2章1-26節「キリストの思い」

第52号

 
 心は目で見ることも、手で触れることも出来ません。しかし、わたしたちに心があるのは誰でも知っています。かつて心は心臓にある、或いは内臓にあると大真面目に論じられた時がありました。しかし、今日の科学は、心は脳の機能であると言います。人間の脳は成人で重さは一二〇〇~一五〇〇グラムです。その容量は人間に最も近いといわれるゴリラやチンパンジー、オランウータンといった高等霊長類と比較して三倍ほどあります。ちなみにゴリラの脳の重さは四五〇グラムほどです。体重比でも人間の脳は他の動物より驚くほど大きく、また緻密に出来ています。脳は様々な感覚から得た情報を一瞬にして判断し、処理します。例えば目から入った情報は脳で大きさ、色、速度、奥行きなどに認識されます。
 心はこのようなわたしたちの脳に宿りました。夜空の星を見て永遠を思い、大自然を見てその雄大さに感動します。花を見て美しいと思い、その花を恋人に、或は死者に捧げたりします。また青春時代の甘酸っぱい初恋の味をいつまでも覚えています。死者への憐れみや弱い人への労わりの心もあります。自分さえ良ければいいという自分中心の心もあれば、様々な欲望のとりこになった心もあります。美しい心もあれば、醜い心もあるのです。
 意識は心の高度な働きです。それは、人間は自分が何をしている、あるいは何を考えているのかを知っているということです。それは自分の外に立って脳の働きを知っているということに他なりません。このことは大切なことです。何故なら自分がしていることを知っているということは、他人の行動や考えを推測することが出来るからです。かつて、人類の直接の先祖であるクロマニヨン人は、ネアンデルタール人が進化したものであると考えられていた時代がありました。しかし、その後の発掘などから、かなりの年代、地球上に共存していたことが分かるようになりました。しかし、彼らは結婚し子孫を残すことは出来ませんでした。それは、種が異なっていたからです。クロマニヨン人もネアンデルタール人も同じ石器時代を生き、脳の大きさも変わりませんでした。しかし、ある時代以降、ネアンデルタール人は地上から姿を消しました。学者によってはその理由の一つに、心の働きが異なっていたことをあげています。クロマニヨン人の方が心の働きが活発で、相手の行動をより深く推測することが出来、また創造的な活動をすることが出来たからであると言うのです。
 人間には心の根底に、その人をその人たらしめる根源的な働きをしている霊があります。例えばわたしたちはただ寝て食べて息をするだけでは生きていることにはなりません。人間は本当の意味で生きることとは何かを求めます。目に見える現象の背後にあって支配している真理を求めようとします。神とは何か、永遠とは何か、幸せとは何かと考えます。また善悪を知り、それによって自分を律し、また他人を裁きます。しかし、人間の心は各自異なるため様々な価値判断、倫理基準が生まれます。ある人にとっての善はある人にとって悪となり得ます。その結果、戦争はいつの時代にもあり、貧困の問題、環境の問題、また様々な社会問題は絶えることはありません。人間の理性を信じ、人類の将来は明るいと考える人はほとんどいないでしょう。

 神の霊はこのような心に宿ります。生まれつき人の心に宿っている訳ではありません。生まれながらの人にとって神の言葉である聖書は読んでも理解出来ませんし、面白いとはいえないでしょう。聖書に書かれている神の知恵は受け入れられません。しかし、いったん神の霊を受けるなら聖書ほど面白い書物はありません。主イエスは神であり、十字架の言葉が真実であることを知らされるからです。神の知恵は神によってのみ知ることが出来るのです。
 サタンは神の計画が分かりませんでした。ですから主イエスを十字架につけて殺したのです。もし知っていれば十字架で殺すようなことはしなかったでしょう。それどころか全力で阻止したことでしょう。サタンは主イエスを十字架で殺しましたが神はそれによってサタンを滅ぼし、人々を罪の縄目から解放しました。そして、復活された主イエスは、信じる者を神の民とされたのです。それは神の知恵でした。

わたしたちが「キリストの思い」を抱き、神と人とを愛して生きようとするにはまず神からの働きかけが必要です。宗教改革者ルターは「わたしはあなたのもとに行くことはできない。それゆえ、わが神よ、あなたが立ってわたしのところに来て下さい。わたしをあなたのもとに連れていって下さい」と祈りました。主イエスはわたしたちの心の扉をたたくのです(黙三:二〇)。それを知って心の扉を開くなら心の中に入ってきてくださるのです。それにより、わたしたちはキリストの心、すなわち霊を持つのです。

0 件のコメント:

コメントを投稿