2010年7月18日日曜日

ヨハネ二「豊かな報いを受ける」

第123号

 著者は主イエスの十二弟子の一人であった使徒ヨハネでなく、使徒ヨハネが作った教団の長老の一人で、皆に良く知られた人でした。そのため特に名前を記す必要はありませんでした。しかし今日その人が誰であるかを特定することはできません。宛先の「婦人」とは「教会」です。教会はキリストの花嫁で、「その子たち」とは教会員のことです。
 この手紙には「真理」という言葉が五回繰り返されています。「真理」とはキリストのことです。使徒ヨハネは「わたしたちはその栄光を見た。それは父の独り子としての栄光であって、恵みと『真理』とに満ちていた」と証し、主イエス御自身も「わたしは道であり、『真理』であり、命である」と言っています(ヨハネ一四:六)。
 「愛」という言葉も六回出て来ます。この「愛」はわたしたちの知っている愛ではなく、主イエスによって初めて知る愛です。生まれつきのわたしたちには何かが欠けており主イエスが神の子であると認めることができません。無意識であっても神への反逆の気持ちがあり、その罪が主イエスを十字架につけたのです。主イエスは十字架の上で「乾く」と言われ「わが神、わが神、なぜわたしをお見捨てになったのですか」と叫ばれました(ヨハネ一九:二八、マタイ二七:四六)。わたしたちが本来負わなければならない罪の裁きを御自身が負われたのです。そして「父よ、彼らをお赦しください。自分が何をしているのか知らないのです」と叫ばれ、わたしたちの罪を赦されるよう天の父に執り成したのです。神はこのようにして御自身の独り子の命に代えてわたしたちの罪を赦されました。ここに神の愛があります。神が愛してくださったようにわたしたちも愛し合わなければならない、それが罪赦されたわたしたちへの「教え」であり「掟」なのです。

 ヨハネはわたしたちに、この愛によって歩むことを求め「このように書くのは、人を惑わす者が大勢世に出て来たからです。彼らは、イエス・キリストが肉となって来られたことを公に言い表そうとはしません。こういう者は人を惑わす者、反キリストです」と言います。
 今日でも多くの教会で主イエスがこのような神の子であることを証していません。自分は正しいと信じ、主イエスを十字架に付けたのは自分だとは認めません。しかし、自分には罪がないと思っているのであれば、それは神を嘘つきとすることです。主イエスはわたしたちの罪を取り除くために御自身の命を犠牲とされたからです。また、ある人たちは主イエスを信じ、従うことにより自分自身が聖くなり救われると教えます。確かに長い信仰生活で自分が立派になったように感じる時もあるでしょう。しかし、年を取って失敗を重ねれば、自分の本質は若い時と何ら変わってはいないことに気づかされるのです。わたしたちは生まれた時と同じ裸であって、主イエスという上着を着ているのにすぎません。着せられた上着が素晴らしければ素晴らしいほど自分のみすぼらしいのに気がつかされるだけです(ローマ七:二四)。また、ある人たちは、主イエスは愛だからわたしたちを愛し、裁くことはないと教えます。人間には生まれつき神から愛される価値があると教えるのです。しかし、罪を悔い改めない限り神の裁きがあり、救われることはありません。

 エゼキエル書には「彼らは、わたしが主であることを知るであろう」と七〇回以上、繰り返して記されています。この言葉は嘆きの中で、審判の中で、回復の中で語られています。エルサレムはバビロニアによって紀元前五八七年に滅ぼされました。神殿は崩壊され、町は瓦礫となり、多くの民は殺され、またバビロンに捕囚となりました。民は国が滅んだ時、どのようにしてヤハウェが主であることを知るのでしょう。このことは、この言葉を自分に当てはめて考えてみる時、初めて理解できます。わたしたちは自分に死んだ時、初めて主イエスが主であることを知るからです。イスラエルはソロモン王の時、栄え、豊かになりました。しかしその時、王と民は神から離れました。わたしたちも同じで、自分の力で生きることができると思っている限り、主イエスが主となることはありません。
 主イエスは「水」と「血」を通って来られたお方です。同じようにわたしたちもまた「水」と「血」によって主イエスに結びつくのです。水とは洗礼で、自分に死に、主イエスに生きて頂くことを意味します。血とは聖餐で、自分の罪を主イエスが受け入れてくださり、主イエスの義を自分のものとすることです。水と血によって主イエスに結びつくとき、「永遠の命」に生きるようになります。それが「豊かな報いを受ける」ということです。そのようにして生きるなら、この地上の生涯にも「豊かな報い」があるのです。この世であろうと、来るべき世であろうと、主イエスが共にいてくださるということこそ「豊かな報い」なのです。

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